| 作品名 【 ナイトホークス 】 | ||
| 著 者 【 マイクル・コナリー 】 | ||
| 出版社 【 扶桑社ミステリー 】 | ||
| 読 了 2001.12.25 |
| 哀しすぎる結末は泣かせる! |
| 自分のにとっての戦争と言えば他国の事にもかかわらずやはりベトナム戦争ではないだろうか。 これは自分の世代、特に大人になってからの戦争と言う事に起因しいていると考えられる。 念のため言っておきますが自分は戦後も大分経っての生まれなのですが、まぁ、20才を過ぎれば多少なりとも世界情勢が分りかけてくる年齢なのだから。 この戦争が今から約30年前の出来事であるにもかかわらず時を越えて想いださせてくれるのはベトナム戦争を題材にした映画「ディアハンターー」「プラトーン」「ハンバーガーヒル」などをテレビで再放送したり、最近ではアフガン戦争もベトナムによく比較される故なのだろう。 これらの映画は、それまでの戦争を美化したり、英雄を偶像視したものではなく前線の兵士の目から見た残酷な現実をありのままに描いたものである。 ベトナムから生還した兵士のなかにはその後に精神が壊れたものや、体験がトラウマになりその後遺症に今、尚、苦しんでいる者たちがいる。「7月4日に生まれて」と言うトム・クルーズ主演の映画がそういうテーマであったように記憶している。 本書の主人公、ハリー・ボッシュもそんな後遺症に苦しんでいる一人なのである。 かってベトナムで敵であるベトコンがトラップとして残している穴(トンネル)を調査する工作兵(通称ネズミ)の任務に就き、死の恐怖と向き合う日々を生きて帰還し、今は刑事とななっているボッシュ。 毎夜あの悪夢にうなされ眠れぬ日々を送っている彼のもとに、或る日戦友の死が知らされる。 彼はボッシュと同じトンネル・ネズミの一員であり、今やジャンキーのレッテルを貼られているメドーズであった。 単なる麻薬中毒者の死として片ずけられそうになっていたこの事件を、ボッシュがその背後にある闇のように深く、暗く、又哀しい犯罪を警察の上層部との軋轢やFBIの女性刑事との愛をからませながら真相に至るまでの9日間を、作者のマイクル・コナリーは簡潔にしかもハード・ボイルドの要素を散りばめながら読み手の感性に訴えた秀逸の1冊に仕上げた。 LAの刑事者と言えばエルロイがすぐに頭に浮かぶがエルロイとは趣がかなり異なる。 エルロイは暗く重く、しかも粘着的な文体であるのに対し、コナリーは重さも暗さもあるが何故か乾いている。 エルロイの描くところのハードボイルドの主人公、例えばホプキンズはボッシュと同じトラウマ(彼は幼児のときの性的体験と殺人なのだが)を持つ刑事でありながら彼は破滅に向かって突き進んで行くタイプの男であり、片やボッシュは孤独である事を自分自身で見つめつつ過去との折り合いを何とかつけていく男なのである。それは刑事としての仕事が彼をそうさせているのであろう。 しかしどちらも圧倒的に読ませる事には変わりなく甲乙つけがたい。 プロットもかなり凝っていて最期の方ではあっと驚くと共に哀しすぎる結末が用意されている。 文中に出てくる南ベトナムの悪徳警官の2人、ビンとトランが陥落寸前のサイゴンから大量のダイヤモンドを持ち出してくるのだが、コナリーはさすがにジャーナリスト出身らしくこの辺は間違いないであろう事実に基づいて書いていると思う。 と言うのは、南ベトナムの軍人上がりの政治家でグエン・カオキという人物がいたのだが彼も同じような事をやっていたのである。 グエン・カオキの場合はダイヤではなく金塊だったのだ・彼は数年前までリトル・サイゴンの裏社会の帝王と呼ばれていた。 コナリーは初めて読む作家なので最初はどうかな?と思っていたが、旅歌さんお勧めだけの事はありました。 最初読むのであれば絶対、ナイトホークスから!と言われていたのでそれまで手にしていた「ラスト・コヨーテ」や「ブラック・アイス」を止め、この本が来るのをジリジリしながら待っていた次第だった。 題名の「ナイトホークス」とは、夜更かしする者、との意味でアメリカの画家、エオドワード・ホッパーが描いた絵の題名である。 都会の寂寥感や孤独を見事なまでに活写していると言われるこの絵はまさしくハリー・ボッシュにふさわしいタイトルではないだろうか。 又、原題である「ブラック・エコー」とは穴の中に入ったときに感じる死の恐怖や、自分自身が生きている証である息がその中で谺する、と言う意味なのであろう。 この先ボッシュ・シリーズは絶対読まねば!! |